国内総生産
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国内総生産(こくないそうせいさん、GDP : Gross Domestic Product)とは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額。ストックに対するフローをあらわす指標であり、経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の一指標で、GDPの伸び率が経済成長率に値する。
原則として国内総生産には市場で取引された財やサービスの生産のみが計上される。このため、家事労働やボランティア活動などは国内総生産には計上されない。(この点は、国民総生産でも同じである。)こうした取り扱いの例外として、持ち家の家賃など帰属計算が行われるものがある(国民経済計算の帰属家賃の説明を参照)。また今期新たに生産されたのでない財(例:古美術品)の取引、最終財の原材料となる中間財の取引は算入されない。
国連統計委員会が勧告を出し、統計設計、財の概念の設定などは勧告に沿って行われる。直近の勧告としては、68SNA、93SNAがある。
日本の国内総生産は、内閣府(2001年の省庁再編以前は経済企画庁)が推計、発表している。
目次 |
経済モデル、GDPの定義、および性質
経済モデルとGDPの定義
GDPを定義する為に、実際の経済を単純化したモデルを与える。[1] 。なお、ここで説明するGDPは名目GDPと呼ばれるもので、後述の実質GDPとは異なる。
国内には家計、企業、政府の三種類の経済部門があり、それとは別に外国という経済部門がある。
また財・サービスの市場、要素市場、金融市場の三種類の市場がある。
企業が自身の(中間ないし最終)財・サービスを作る為に別の企業から買い取る財・サービスを中間財・サービスといい、それ以外の財・サービスを最終財・サービスという。
財・サービスの市場は企業および外国が自身の最終財・サービスを売る為の市場で、各経済部門はこの市場から財・サービスを買い取る。
一定期間に家計、企業、政府、および外国が財・サービス市場から最終財・サービスを買い取ったときに支払った金額をそれぞれ消費支出、投資支出、政府支出、輸入という。
また、一定期間に企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金の総額を国民総生産(GDP)と呼び、外国が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として金を得る事を輸出と呼ぶ。
以上の定義でわかるように、国民総生産には企業が中間財・サービスを売る事で得た金は含まれない。中間財・サービスは、別の(中間ないし最終)財・サービスを作る為の要素として使われるので、「二重カウント」を避けるため、中間財・サービスを含まないのである。
要素市場および金融市場はGDPを定義する際直接的には使用しないが、モデルの全体像を捕らえやすくする為、説明する。要素市場は企業が労働、土地、資本(=機械や建物)、および人的資本といった生産要素を家計から購入する為の市場で、生産要素に対する対価として賃金、利潤、利子、賃貸料などの形で企業から家計に金が流れ込む。
最後に金融市場は銀行取引、株式市場、および債券市場などの総称で、金融市場には家計から民間貯蓄が流れ込み、外国からは外国貸付や株式購入により金が流れ込む。
企業は企業による借入や株式発行により、金融市場から資金を調達し、 政府は政府借入により金融市場から資金を調達する。 そして外国は外国借入や株式売却により金融市場から資金を調達する。
三面等価の原理
上では、企業が財・サービスの市場で自身得た金の総額として国民総生産(GDP)を定義した。この定義を支出による定義と呼ぶ。
GDPにはこの他に生産額による定義、分配による定義があり、これら3つの定義は全て同値となる(三面等価の原理)
生産額による定義
国内で一定期間(たとえば一年間)に生産された全ての最終財・サービスの総額としてGDPを定義する。
企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来売る為の商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。よって生産額による定義による定義は支出による定義と一致する。
財・サービスXに対し、Xの売上額からXを作るのに使った中間財・サービスの値段を引いたものをXの付加価値という。GDPの定義より明らかに、GDPは(中間または最終)財・サービスの付加価値の合計に等しい。
分配による定義
企業は財・サービスを売る事で、その付加価値分だけの儲けを得る。 企業の得た儲けの一部は、賃金、利子、賃貸料、および税金として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる。(そして利潤の一部は株主への配当となる)。 従ってGDPは家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義できる。
所得恒等式
財・サービスの市場には消費支出、投資支出、政府支出、および輸出の金額として金が流れ込み、それらの金は国民総生産および輸入の金額として企業および外国に流れ出る。
財・サービスの市場に流れ込んだ金の量と財・サービスの市場から流れ出た金の量は等しいので、次の恒等式(所得恒等式)が成り立つ事となる。 ここで経常収支とは輸出額から輸入額を引いたもの。
国民総生産 = 消費支出 + 投資支出 + 政府支出 + 経常収支
関連概念
実質GDP
以上で説明したGDP(名目GDP)は、経済状況のみならず、インフレによる価格変動によっても変化してしまう。そこで価格変動の影響を排除したGDPも定義されており、これを実質GDPと呼ぶ。
価格変動の影響を排除する為、実質GDPではある年(例えば2001年)を基準年として定め、基準年における最終財・サービスの価格を使って現在のGDPを計算する。
厳密には以下の通りである。最終財・サービスiの基準年における価格がPiで、今年の価格がQiとする。またiは今年Xi個売れたとする。
このとき、今年の実質GDPは
実質GDP = Σi PiXi
により定義される。ここで和Σiは全ての最終財・サービスを渡る。
一方今年の名目GDPは
名目GDP = Σi QiXi
である。
以上で述べた実質GDPの値は、基準年の選び方に依存してしまう。従って現在では基準年の選び方の影響を排除する為に、「連鎖」という方法で補正した定義を用いて実質GDPを計算している。
GDPの変化(経済成長率)に関しては経済成長を参照。
一人当たりGDP
GDPをその国の人口で割った値を一人当たりGDPと呼ぶ。 国ごとに人口が違うので、国ごとの経済状況を比較するには、通常のGDPではなく一人当たりGDPを使う必要がある。GDPには名目と実質がある為、一人当たりGDPも一人当たり名目GDPと一人当たり実質GDPがある。
GDPデフレーター
名目GDPを実質GDPで割ったものをGDPデフレーターと呼ぶ。 名目GDPと実質GDPはそれぞれインフレの調整を行っていないGDPと行ったGDPであるから、その比にあたるGDPデフレーターは、インフレの程度を表す物価指数であると解釈できる。 従ってGDPデフレーターがプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる。
GDPデフレーターが消費者物価指数や企業物価指数など他の物価指数と著しく異なる点は、GDPデフレーターは輸入物価の上昇による影響を控除した国内の物価水準を表しているという点である。このため、原油価格の上昇など輸入物価が上昇して国内のガソリン価格が上昇するというような場合には、消費者物価指数や企業物価指数が上昇しているにも関わらず、GDPデフレーターが下落をするということがしばしば起こる。
消費者物価指数は家計の消費支出のみを対象とし、企業物価指数は企業間で取引される商品だけを対象としているなど、消費者物価指数や企業物価指数は、経済活動の一部だけを対象とした物価指数である。これに対してGDPデフレーターは経済活動全般を対象とした総合的な物価指数であるが、輸入物価が上昇すると下落しやすく、逆に輸入物価が下落すると上昇するという、直感と異なる動きをすることがある。
このため1990年代末から2000年代初頭にかけて、日本経済で物価の下落が続くデフレーションが続いているのかどうかを判断する際に、GDPデフレーターを使うことが適切であるかどうかについては見解が分かれた。下落が続いていた消費者物価は2005年にはいると下落幅が縮小し、10月には消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比はゼロとなって、11月以降はプラスが続いた。しかし消費者物価の上昇には原油価格の上昇による影響がかなりあったため、GDPデフレーターは前年比で1%以上の下落が続いていた。量的緩和政策の解除時期を巡って政府と早期解除を望む日本銀行の間で議論が起こり、政府はGDPデフレーターの動きにも配慮すべきであるとして、量的緩和政策の解除に対しては慎重な姿勢をみせた。
なお、2006年4月現在、日本のGDPデフレーターはパーシェ型の連鎖指数で、実質GDPはラスパイレス型の連鎖指数であり、米国の実質GDPはフィッシャー型の連鎖指数が採用されている(パーシェ、ラスパイレス、フィッシャー及び連鎖指数の説明については、指数を参照)。
GNPとGDPの違い
国の経済の規模・成長を測る物差しとして、1980年代頃までは国民総生産(GNP)がよく用いられたが、これは外国に住む国民の生産量も含んでおり、本来の国の生産量を正確に計ることができない為、近年では外国での生産活動分を除いた国内のみの生産を計る国内総生産を使用することが多くなった。
GNPとGDPは、日本の場合はほとんど同額で、若干GNPのほうが多い。これは「外国での国内居住者の生産」が外国で運用されている日本資本の受け取る金利・配当も含むからである。日本は、対外債権国であるため海外へ支払う金利・配当よりも海外から受け取る金利・配当のほうが多い。このため日本ではGNPのほうが多くなる。一方で、中南米諸国などの対外重債務国は、外国へ支払う金利が多いため、GNPよりもGDPが多い。このようにGNPとGDPの違いは対外的な債権債務の国民総生産(あるいは国内総生産)に対する割合が高い国にとっては重要である。
国内総生産を推計する体系を国民経済計算(体系)と呼ぶように、国民概念がもともと利用されてきたが、国内の経済活動状況を判断する基準としては国内総生産を使用することが一般的となり、日本でも1993年から国民総生産に替わって国内総生産を使用するようになっている。
実際の統計では、国民であるかどうかの区別は、国籍ではなく国内居住者であるかどうかによって判断されている。従って、日本国籍を有していても国外に2年以上滞在している海外居住者が行う生産活動は、日本の国民総生産には反映されない。逆に、外国国籍を有する人々の生産活動であっても日本に6ヶ月以上滞在している居住者であれば、日本の国民総生産に計上される[2]。日本の国内総生産には含まれないが国民総生産に計上される海外での生産活動の例としては、日本に居住している歌手が海外公演を行って得た出演料があげられる。
国内純生産
国内純生産(NDP: Net Domestic Product)は、国内総生産から固定資本の減耗分を差し引いたものである。しかし経済全体での固定資本の減耗分は測定しづらく、この為経済学者達は減耗の推定をあまり信用していない[3]。
グリーンGDP
従来のGDPから天然資源の減少分を引いたもの[4]。
域内総生産
国内総生産が一国内において生産された付加価値額を表すのに対し、域内総生産 (Gross Regional Product) は都市圏や経済圏、州や県など、一定の地域内で生産された付加価値額を表す。域内総生産には中央政府が行う生産が含まれない場合もあり、全国の域内総生産を合計しても、必ず国内総生産と一致するとは限らない(日本の経済産業省が公表している地域間産業連関表のように、不整合を項目として設ける等の調整を行わない限り、全国計と一致することの方が珍しい。例えば中国の各省の域内総生産を合計すると、国内総生産よりも大きな値となる)。
都市圏同士の比較や地域経済間比較といった各種分析で使用される他、ロシアの統計でよく使われる。
日本
日本の国内総生産(実質GDPと名目GDP、GDPデフレーター)の経年変化[5]。
日本は1995年からGDPの成長が停滞している[6]。
| 1955年~1979年 | 1980年~1993年 | 1994年~2008年 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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- 単位は10億円
- 1955年~1979年は、平成2年基準 (68SNA) 連鎖
- 1980年~1993年は、平成7年基準 (93SNA) 連鎖(固定基準年方式)
- 1996年~最新年 は、平成12年基準 (93SNA) 連鎖(連鎖方式)
- いずれも速報値
各国の国内総生産順リスト
国の国内総生産順リスト(MER、IMFによる各国政府発表数値の集計)上位10位。2008年のIMFのレポートによると、日本は世界のGDPの約8%を占める。
- 単位は10億US$。
| 順位 | 国名 | 2008年 |
|---|---|---|
| ― | ファイル:Newworldmap.svg 世界 | 60,689.81 |
| ― | ファイル:Flag of Europe.svg 欧州連合 | 18,394.12 |
| 1 | ファイル:Flag of the United States.svg アメリカ合衆国 | 14,264.60 |
| 2 | ファイル:Flag of Japan.svg 日本 | 4,923.76 |
| 3 | ファイル:Flag of the People's Republic of China.svg 中国 | 4,401.61 |
| 4 | ファイル:Flag of Germany.svg ドイツ | 3,667.51 |
| 5 | ファイル:Flag of France.svg フランス | 2,865.74 |
| 6 | ファイル:Flag of the United Kingdom.svg イギリス | 2,674.09 |
| 7 | ファイル:Flag of Italy.svg イタリア | 2,313.89 |
| 8 | ファイル:Flag of Russia.svg ロシア | 1,676.59 |
| 9 | ファイル:Flag of Spain.svg スペイン | 1,611.77 |
| 10 | ファイル:Flag of Brazil.svg ブラジル | 1,572.84 |
脚注
- ^ この節は、クルーグマン マクロ経済学p38~41およびp189~190を参考にした。
- ^ 滞在期間に関しては「外国為替及び外国貿易管理法(外為法)」に関する旧大蔵省の通達「外国為替管理法令の解釈及び運用について」より
- ^ スティグリッツ『マクロ経済学』第三版p90
- ^ スティグリッツ『マクロ経済学』第三版p93
- ^ 内閣府の国民経済計算 1955年~1979年、1980年~1995年及び 1996年~最新年
- ^ BBT総合研究所 (大前研一「ニュースの視点」から) 日米中のGDPの推移グラフ1980年~2008年
関連項目
- 国民経済計算
- 国の国内総生産順リスト(全ての国・地域対象)
- 国の国内総生産の動態(全ての国・地域対象)
- 域内総生産順リスト (全ての国・地域対象)
- 国民総生産 (GNP)
- 国民純生産
- 国民総所得 (GNI)
- 県民経済計算
- 英語版Wikipedia 国別GDPリスト
- List of countries by GDP (nominal)(国別GDPリスト(名目))http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_%28nominal%29
- List of countries by GDP (nominal) per capita.(国別一人当たりのGDPリスト(名目))http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_%28nominal%29_per_capita
- List of countries by GDP (PPP).(国別GDP(購買力平価)リスト)http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_%28PPP%29
- List of countries by GDP (PPP) per capita.(国別一人当たりのGDP(購買力平価)リスト)http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_%28PPP%29_per_capita

