セマルハコガメ

提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

セマルハコガメ
ファイル:Cuora flavomarginata.jpg
セマルハコガメ Cuora flavomarginata
保全状態評価
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
ファイル:Status iucn2.3 EN.svgワシントン条約附属書II類
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudinoidea
: イシガメ科 Geoemydidae
: ハコガメ属 Cuora
: セマルハコガメ
C. flavomarginata
学名
Cuora flavomarginata
(Gray, 1863)
シノニム
Cistoclemmys flavomarginata
Gray, 1863

Cyclemys flavomarginata sinensis
Hsu, 1930
Cuora evelynae
Ernst & Lovich, 1990

和名
セマルハコガメ
英名
Yellow-margined box turtle

セマルハコガメ(背丸箱亀、Cuora flavomarginata)は、動物界脊索動物門爬虫綱カメ目イシガメ科ハコガメ属に分類されるカメ。

目次

分布

C. f. evelynae ヤエヤマセマルハコガメ
模式標本の産地(模式産地)は石垣島日本)。日本(石垣島、西表島固有亜種
C. f. flavomarginata チュウゴクセマルハコガメ
模式産地は淡水(台湾)。中華人民共和国安徽省河南省江西省江蘇省湖南省湖北省浙江省福建省広西チワン族自治区、台湾)

形態

最大甲長19cm。背甲はドーム状に盛り上がり、中央部からやや後部で最も高くなる。背甲は上から見ると楕円形や卵型。孵化直後からある甲板(初生甲板)や成長輪は明瞭だが、老齢個体では磨耗し不鮮明になる。項甲板はやや大型で、後方が幅広い楔形や等脚台形椎甲板には筋状の盛り上がり(キール)が入る。肋甲板にはキールがないか、あっても破線状。縁甲板は鋸状に尖らず滑らか。背甲の色彩は赤紫色を帯びた暗褐色や黒褐色。初生甲板の周辺は赤やオレンジ色になる個体が多いが、成体では一部のみ明色になる個体もいる。椎甲板のキールの周囲には黄色やオレンジ色の縦縞が入る。縁甲板下部の色彩は黄色や淡黄色。種小名flavomarginataは「黄色い縁のある」の意で、英名(yellow-margined=黄色い縁のある)と同義。 腹甲は大型。腹甲には切れこみが入らない。左右の肛甲板の継ぎ目(シーム)が磨耗することが多く、癒合したように見える。蝶番は属内でも発達し、腹甲を折り曲げる事で背甲との隙間を完全に閉じることができる。腹甲の色彩は黒や黒褐色。

頭部はやや大型。吻端はあまり突出せず、上顎の先端は弱く鉤状に尖る。頭部の色彩は褐色や暗緑色などと変異が大きい。鼓膜の周辺には楕円形、後頭部側面には楔形の黄褐色やオレンジ色の斑紋が入る。四肢背面の色彩は暗褐色で、腹面の色彩は褐色。尾は太くて短い。

卵は、長径3.5-5.8cm、短径1.6-2.6cmの楕円形で、白く硬い殻で覆われる。孵化直後の幼体は甲長3.2-4cm幼体は背甲が扁平で、後部縁甲板の外縁が僅かに鋸状に尖る。また左右の肛甲板のシームが明瞭。成長に伴い甲高が高くなり、縁甲板の突起や左右の肛甲板のシームは消失する。

  • C. f. evelynae ヤエヤマセマルハコガメ

背甲が扁平で細長い。第1椎甲板の横幅が大きい傾向がある。

  • C. f. flavomarginata チュウゴクセマルハコガメ

背甲が盛りあがり幅広い。第1椎甲板の横幅が小さい傾向がある。

分類

頭骨の形態や蝶番が発達する事、陸棲傾向が強い事からモエギハコガメと共にオカハコガメ属(Cistoclemmys)を形成する説もあるが、現在は無効とする説が有力。ミトコンドリアDNAの解析による分子系統学の研究から、ハコガメ属内ではユンナンハコガメと単系統群を形成するという説もある。

2亜種に分けられる。台湾を除いた中華人民共和国の個体群をC. f. sinensisとして分割する説もあるが、台湾の個体群との差異がほとんどないため分割を無効とする説が有力。

  • Cuora flavomarginata evelynae Ernst & Lovich, 1990 ヤエヤマセマルハコガメ Yaeyama yellow-margined box turtle
  • Cuora flavomarginata flavomarginata (Gray, 1863) チュウゴクセマルハコガメ Chinese yellow-margined box turtle

生態

広葉樹林やその周辺に生息し、森林内を流れる河川沼沢地湿原の周辺を好む。陸棲で夏季に水場の周辺に集まったり浅い水場に漬かることもあるが、水中に潜ることはまれ。

食性は雑食で、昆虫類節足動物ミミズ、陸棲の貝類、動物の死骸、果物などを食べる。

繁殖形態は卵生。6-9月に1回に1-6個の卵を数回に分けて産む。卵は通常3か月以内に孵化する。性染色体を持たず、発生時の温度が一定の温度より高いとメス、低いとオスになる確率が高くなる(温度性決定)。

人間との関係

中華人民共和国では食料や薬用とされる。

開発による生息地の破壊や、道路脇の側溝による生息地の分断および落下による死亡(側溝から出られないため)や車による轢死、食用やペット目的での乱獲(日本国内でも違法に捕獲されているとされる)などにより個体数が激減している。そのため生息地では保護されている。亜種ヤエヤマセマルハコガメは1972年(当時はセマルハコガメの日本個体群)に国の天然記念物に指定され、採集や飼育は禁止されている。一方で沖縄島では本来は分布していない本種の発見例が多く、定着している可能性が高いとされる。また既に沖縄島において本種とリュウキュウヤマガメの属間雑種が発見され、遺伝的汚染が心配されている。

C. f. evelynae ヤエヤマセマルハコガメ

絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト

ファイル:Status jenv VU.png

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。以前は中華人民共和国原産の基亜種の野生個体が安価で大量に流通していたが、扱いが悪くすぐに命を落としてしまう個体が多かった。中華人民共和国や台湾でも個体数が激減し、さらに2000年にハコガメ属全種がワシントン条約附属書II類に掲載されたため流通量は激減した。現在は主に基亜種の飼育下繁殖個体が流通する。近年の流通量の減少およびそれに伴う価格の高騰、飼育下繁殖個体の流通などにより状態を崩した個体の流通は減少している。主に浅い水場を設けたテラリウムで飼育されるが、幼体は乾燥に弱いこともありケージ内に甲高の半分程度の水を張ったベアタンクで飼育されることもある。大型種ではないものの活発でケージ内をよく汚すため、飼育にあたっては大型のケージが必要になる。乾燥に弱いためケージ内には大型の水入れを設置する。また性質が荒く(特にオス)他個体に噛みついたり、最悪の場合は捕食することもあるため基本的には単独で飼育となる。前述の通り乾燥に弱いため、腐葉土やヤシガラ土などの湿度を保つことのできる床材を甲羅が完全に隠れるくらいの深さで敷く。雑食のため餌が偏ると栄養失調を起こす可能性もあるため、生体に有害なものを除いて様々な餌を与えることが望ましい。

画像

関連項目

参考文献

  • 今泉吉典、松井孝爾監修 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社1984年、136頁。
  • 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ2 ユーラシア・オセアニア・アフリカのミズガメ』、誠文堂新光社2005年、23頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社2000年、113、201頁。
  • 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑』、ピーシーズ、2002年、312頁。
  • 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、158頁。
  • 安川雄一郎 「オカハコガメ属とヒラセガメ属の分類と生活史(前編)」『クリーパー』第22号、クリーパー社、2004年、8-16、40-42頁。
  • 安川雄一郎 「オカハコガメ属とヒラセガメ属の分類と生活史(後編)」『クリーパー』第23号、クリーパー社、2004年、8-10頁。
  • 安川雄一郎 「水棲ガメの世界」『ハ・ペト・ロジー』Vol.3、誠文堂新光社、2005年、31、36、39、41頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 両生類・はちゅう類』、小学館、2004年、75頁。

外部リンク